「心」の状態が、外から目でうかがえる場所は、舌で、特に舌の先に「心」の状態が反映されます。 舌の情報は、「心」だけではなく、全身の情報を手に入れることができ、 東洋医学の診断をする上でとても大切な場所です。舌診では、舌の形、色を見、次に舌苔の性状、色を判別します。
1.舌の形
全体にぼてっとして大きい感じを受けるものを「胖大」といいます。 舌の周りがガタガタになっているのは、歯の跡がついたもので「歯痕」といいます。 舌がむくんで口の中でふくれた状態が長く続いたために歯の形がついたもので、「胖大」と同じような意味を持っています。どちらも脾虚(脾の働きが悪いため、 食欲が低下したり、気が不足する状態)、湿盛(余剰の水分がある状態、痰飲ともいいます。)、 気虚(気が不足する状態で、疲れやすいなどの症状が出現します。) 反対に舌が痩せて薄いものは、血虚(血の滋潤作用の不足で、皮膚の乾燥、目がかすみや不眠など)、 陰虚(津液不足のことで、空咳、のどのいがらさ、足の火照りなど)などを示します。 舌に裂け目があるものをれつもん「烈紋」といって、 病的には、熱が盛んで陰液の消耗が激しい陰虚や血虚を示します。
2.舌の色
淡い感じや白っぽいのは、陽虚、気虚、血虚などがみられます。 「淡紅」と表現されるほんのりした赤さが正常とされ、陰陽のバランスがとれた状態です。 紅さが強くみられるものは、熱証や「陰虚火旺」と呼ばれる陰分が不足して、 相対的に陽気が強くなって熱を帯びた状態です。もっと赤味が強い「絳」と呼ばれるものは、 熱が盛んで熱邪が内部に深く侵入しているものをさします。紫色が認められるものは、 血お(血液がよどんで、流れの悪い状態)の存在を示します。 紫色が、舌全体にみられるものや部分的に局在してみられる場合(お斑)があります。
3.舌苔
舌の表面には、うっすらと白い苔が生えているのが普通です。 この舌苔は、体の状態によって変化し、東洋医学の診断に重要な手がかりになります。 苔の厚さ、湿り具合、色を観察します。正常は、白い薄い苔で適度に潤いがあります。 厚い苔は、病邪の勢いが強いことを示します。通常の苔の厚さが厚くなっても、 顆粒状に苔が集合しておりますが、苔が融合してべたっとした状態になることがあります。 この舌苔の異常のことを「じ苔」といいます。 じ苔は、湿濁や痰飲といった陰液過剰状態(日本漢方では、水毒といいます。)や 食積(食べ過ぎで消化しきれない状態)など、体の内側に余り物が沢山ある状態を示しております。 こういった舌をみたら、食べ物や飲み物の摂り過ぎかどうかをチェックする必要があります。 摂り過ぎがあまりなくても 苔が見られる人がいますが、通常の食事でも負担になり、 消化しきれない体質で、脾虚の存在が考えられ、六君子湯などの漢方薬の助けが必要となります。 苔が殆どみられない「無苔」や部分的に剥がれてしまっている「剥苔」は、陰液の不足や気虚を示します。 舌全体が乾いたものは「燥」で、津液不足や病邪の性質が熱や燥に変化したことを意味します。 舌の表面が透明な液体で覆われて過度に湿潤した状態を「滑」といい、湿痰や寒湿を示します。 舌苔の色は、白、黄、黒などに変化します。白は、寒や湿、黄は、熱と関連しています。 黄色の舌苔には、清熱作用のある黄連解毒湯などを用います。
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